おもとの病害

病害と言っても、バクテリアやカビなどの外敵に犯されて起こる病害と、育て方の手落ちによって起こる病害が有ります。これらの病害を誘発させる原因は、殆ど高温多湿という環境に由来しています。 おもとは、細胞の構造上、新陳代謝が活発になると、どうしても浪費が伴いますので、高温多湿という環境は過酷な環境になっています。逆に、おもとの外敵であるバクテリアやカビは高温多湿の環境で活発に繁殖する為、病害が発生するのです。おもとに不利な高温多湿の環境を、工夫を凝らして低温寡湿の環境を作り出し、おもとを栽培することが、暑い季節の安全策といえます。

▼いもぐされ病

おもとの外敵の中で最も始末の悪い病害に数えられているのが「芋ぐされ病」です。この病気にかかったおもとは、その葉がどんなに素晴らしい芸を見せても、商品としては葉傷よりもずっと価値が低くなります。芋(根茎)は、おもとの体の葉を作り、根を作り出す成長点を持ち、繁殖の中心になっているからです。 この病気は、茎ぐされ病菌Corticicum vagum や腐敗菌 Fusariumと言うカビの類など、2,3種の嫌気性腐敗菌が原因になっています これらの芋ぐされの原因となる病原菌は、芋が無傷の場合でも多少侵蝕しますが、殆どの場合何らかの原因で作られた芋の傷口から侵入し発病しています。 1)葉割れや、無理に葉を毟り取った後に出来る根茎の傷跡が、首ッチョと呼ばれる悪質な致命症状の原因となります。 2)芋吹きを取る為にランセットで切った芋傷。(「ガジっている」と言う。根茎の底が焦げ茶色か飴色に変わっている症状で、手当てによっては病気の進行を食い止められる。) 3)根落ちの痕が進んで原因になる。 等、さまざまな症状で芋ぐされが始まります。線虫やネダニによってフザリウム菌が媒介される場合も多く、芋ぐされのおもとを良く見ると、ごく小さな白いミミズや白い小さな粉のような虫が動いています、これが芋ぐされの原因となる線虫とネダニです。

既に病気に犯されたおもとは、犯された部分を病症が見えなくなるまで削り取り、空気の流通をよく水苔を空間を作る様にフワフワに巻き根茎をコップ内の空間に浮かせ根の先端をコップの水に漬けて、嫌気性菌が活動しないように低温状態で高冷地で育てるとか、ウスプルンにひたす化学療法もありますが、病原菌が根茎深く侵入した状態では、90%は助からないでしょう。

▼青枯病

「青にえ」、「青だれ」などと、おもと作りの人は呼んでいます。 この病原菌はエルウイン・スミスと言う人が見つけて、BacteriumSolanacearumと言う学名をつけました。 症状ははまさに「倒れる」で、前の日は別段なんでもなかった元気なおもとが、一昼夜にして葉の根元(首)から倒れてしまう恐ろしい病気です。この病気は病原菌が葉の根元の傷(葉割れなど)や若くて柔らかい根茎の部分から侵入して、おもとの血管である維管束を閉鎖して、その部分をグジャグジャに腐らせてしまう恐ろしい病害です。 病原菌は28℃~35℃の温度で最も活動し、17℃以下、または、37℃以上では菌は活動しません。ですから、盛夏の猛暑が続く時には発病しないで、むしろ、立秋のちょっと涼しくなった時期に発病します。予防としては、芋吹き、一年実生等を寄せ植えしてある場合、発病したおもとを速やかに取り除くと共に、寄せ植えにしてあったおもとは一本一本植え替える必要があります。また、発病時に使用されていた水苔や砂利などの植え込み材料は、全部焼却する等して、病原を他のおもとに撒かないように処理します。

▼赤星病

赤星病は「葉ボチ」、「ボチ」、「雨星」などとも呼ばれています。 おもとの赤星病の原因を良く観察してみると病原菌による場合と、生理的原因による場合があります。病原菌による場合も、生理的原因による場合も症状の表れかたはほぼ同じで、葉面に赤茶けた斑点ができます。この斑点は、最初はその部分の緑が失われて白っぽい緑になり、黄色から、やがて赤茶けた斑点になります。赤星病は冬から春にかけてしだいに気温が上昇し、空気中湿度が高まってさわやかになり、おもとの生理作用が活発になり出す頃に一度にパッと現れます。盛夏には発生の仕方が緩慢なのはどういう訳かはっきりしていません。今まで解っている所では、おもとの赤星病菌Sphaerulina Rohdeaが寄生して、6月頃発病する例が報告されています。この場合は、にわか雨や夜露を防ぎ、葉に水滴がかからないようにして、病原菌が付着しないように予防すると共に、4,5月頃からダイセン、ノックメートを予防散布すると良いと言われています。生理的原因から発病する赤星病は、根から吸い上げられた養水分中に多量に酸化鉄、塩化鉄、硫化鉄が含まれていると、根から吸収して葉まで送られ、同化作用(光合成)が気温の低下と共に緩慢になると集鉄作用が起きます。そして春に再び同化作用が盛んになると、集鉄した部分の細胞は白っぽくなり、赤茶けて枯れ、枯れた斑点にカビがついて胞子を咲かせ発病します。予防としては、潅水用の水を良く調査して、硬水を避けて軟水を使用することです。もし、硬水(鉄分の多い卵の腐ったようなにおいの水)は、水槽に汲み置きして荒木田や石灰分の多い土を入れて攪拌してから沈殿させ、上澄みの水を汲んで使用すると鉄分が除去されて予防することが出来ます。

▼黒斑病

黒班病はよく赤星病と混同されている病気で、葉に黒っぽい灰色で大きく、中央が黒く覆われている病班が現れるのが特徴の病害です。黒班病の病原菌は2種類有りますが、Macrosporiumnobile が主な寄生虫と言われています。発生は日中の温度が18℃~30℃で、夜間が5℃前後を保つ気候状態で活動、繁殖、伝播します。防除は赤星病と同じです。

▼根落ちと渋根

根落ちの原因は、①芋ぐされ病の病原菌が寄生しておきる、②根数が、体全体に比べて多く、必要以上に呼吸作用が行われている、③根が古根になって老化して役立たなくなって枯れる場合があります。 渋根の原因は、根に酸化鉄などが付着して起こると言われています。どの場合でも、鉢の中の酸素不足と炭酸ガスの充満による窒息状態が原因になっています。砂利植えの場合、桑炭の併用は鉢内の酸度を調整し、根落ちや渋根を起こさせないばかりかおもとの生理にも良い作用を致します。根落ちが老化によって起こる以外は、根を腐らせていた病原菌が維管束を伝わって根茎に入り、芋ぐされを起こしている現象を良く見かけます。芋ぐされを良く観察すると解りますが、殆ど「渋根」に成ってから根落ちが進んでいる痕跡を見ることが出来ます。おもとの体は、葉も根茎も根も一本の維管束という管の束によって繋がっていますから、根の病気は上に上にと上がって行きます。ですから、根の病原は根茎や葉の病原として十分気をつける必要があるのです。

▼葉先の枯れ

観賞価値を下げる難題の葉先の枯れは、おもと作りをしていると誰もが経験する現象です。この原因に、①葉水と呼ばれる水遣り、②雨、露、濃霧 が考えられます。この二つとも葉の先端に写真に見られるような水玉を残す働きがあります。葉先に残った水玉にはいろいろなバクテリアやカビの胞子が混ざっていて、水玉の付着乾燥の繰り返しで葉の裏にバクテリアやカビの胞子が蓄積され、葉の裏にある気孔に侵入して葉の先端を枯らしているのです。特に、芋吹きや細胞組織のまだ若く柔らかい葉は気をつける必要があります。対策としては、葉先に付着した水玉を脱脂綿か絵の具の筆で拭い取るか、葉先の表面だけ薄くパラフィン塗っておくなどの方法が取られています。間違っても葉全面や葉裏に塗らないように注意する必要があります。

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